和のこと

「扉の閉め方が綺麗だね」

今は昔、社会人3年目の春、わたしは東京の営業所から、大阪本社に転勤になったのでした。
その部署は、経営企画。経営判断をする社長、取締役と同じフロアの、いわゆる中枢の部署です。
東京の下町の一営業所で、お客さんからの電話をとり、年の近い先輩とおしゃべりしながら仕事をする環境から、お偉いさんと中間管理職、それを支える”気配り聡明朝飯前!”と言わんばかりに素敵な女性スタッフ達と仕事をする環境へと、突然の転機でした。

約50名の同期の中では、わたしともうひとりの女性社員がいち早く本社転勤となりました。

「なぜわたし?花形っぽい部署に?」
転勤前も後も、ずーっと謎でした。
もうひとりの同期は、お偉いさんと縁がある営業所にいたし、美人で学歴もすごいし、納得感がありました。
それに対し、わたしは営業成績も人事考課もごく普通でした。学歴も、容姿も、愛嬌も、わたしを上回る若者は沢山いました。
同じ営業所の先輩からは「何かしたの?」と言われるほど不思議がられました。

入社10数年目の最近になって、「もしかしたらそうかも」、と超個人的に感じていることがあります。

異動した初日、課長から「扉の閉め方が綺麗だね」と誉めらたことがありました。
新しい部署は静かなフロア。そーっと音をたてずに閉めたのだと思います。

わたしは、大阪に異動する前、東京で約1年、おばあちゃんだらけの茶道サークルに所属し、月に数回、夜の公民館の和室の「しーん」とした空間で、和の静寂を思い切り味わっていたのです。

★茶道サークルの皆さんと浜離宮へお出掛け。わたし以外のみなさんはオーバー50代でしたが、とても楽しかった。着物は叔母に借りて着せてもらっていました。

仕事終わりに、自転車で通った茶道サークル。休みの日にも、浜離宮にみんなでお出掛けしたり、公民館や先生のご自宅でお茶会がひらかれたりしました。
茶道のお点前は覚えられなかったけれど、先生の無駄のない動き、静寂、細かな決まりごとの意味、非言語の和の美しさを、なんかすごいな~、と感じる貴重な時間でした。

戸は静かに閉める、それが美しい。

わたしの中にインストールされた和の力が、わたしを知らない世界に連れていってくれたのでしょう。
わたしの憶測を、会社の人には決して言えません(笑)
それでもわたしはそうだと思うのです。

そういえば先日、醤油のボトルをうっかり「どん!」と食卓に置いたとき、夫は「ちょっと~、静かに置いてよ~」と文句を言いました。
あらあら、夫もわたしの和の力に騙されて(?)結婚してしまったのかしら、と、「ごめんごめん~」と言いながら、ひとりニヤニヤするわたしでした。

★公民館でお茶会。茶道サークルでは、メンバーの方が写真も撮ってプリントまでしてくださっていました。転勤で途切れたご縁、みなさんお元気かなぁ~。

ABOUT ME
はるかふる
心豊かに生きると決めた子育て主婦の「くすっ」と笑えてたまに深いかもしれない日々を発信。|活動拠点は週1ペースの無料メルマガ。Twitterとインスタのフォローもお待ちしてます♪
はるかふる公式メルマガ
はるかふる公式メルマガ配信中

無料メルマガ配信中です

ご登録はこちら